社会的包摂と組織

社会的包摂について

自然権ついて解説します。

自然権とは

・人が生まれながらにして持っているとされる権利。自己保存の権利、自由の権利、平等の権利など、国家権力をもってしても奪うことのできないもの。

自然権の概念は、人間の基本的権利を保障する一方で、社会において以下のような問題を引き起こす可能性があります:

1.権利の衝突:個人の自然権が互いに衝突する場合があります。例えば、ある人の自由の権利が他者の自己保存の権利を脅かす可能性があります

2.無秩序状態:ホッブズが指摘したように、全ての人が無制限の自然権を持つ自然状態では、「万人の万人に対する戦争」状態に陥る可能性があります

3.権利の制限の正当性:社会秩序を維持するために自然権を制限する必要がある場合、その正当性をどのように確保するかという問題が生じま

4.平等の実現の難しさ:自然権として平等が謳われていても、現実社会では不平等が存在し、その解消が課題となります

5.国家権力との緊張関係:自然権の概念は国家権力を制限する根拠となりますが、同時に国家の統治との間に緊張関係を生み出します。

私は、この自然権により多様性が定着せずに、分断を生む原因となると考えます。

組織で自然権の概念は、差別・区別・排他の根本原因となる可能性があります。

権利の解釈の違い:自然権の概念は、全ての人が平等に権利を持つことを主張しますが、その解釈や適用範囲に関して意見の相違が生じる可能性があります。これにより、特定のグループに対する差別や排除を正当化する論理として悪用される恐れがあります。

自己保存の優先:ホッブズが指摘したように、自然状態では各個人が自己保存を最優先します。この考えは、他者を排除したり、自分と異なる集団を脅威とみなしたりする傾向を助長する可能性があります。

権利の衝突と優先順位:自然権の中でも、生命権、自由権、財産権などが互いに衝突する場合、どの権利を優先するかという問題が生じます。この優先順位の判断が、特定のグループに不利益をもたらし、結果として差別につながる可能性があります。

平等の解釈の難しさ:自然権思想は平等を謳いますが、「平等」の具体的な意味や実現方法については様々な解釈が存在します。

この解釈の違いが、現実社会における不平等や差別の温床となる可能性があります。

結論として、自然権の概念それ自体は人間の平等と尊厳を強調するものですが、その解釈や適用の過程で生じる問題が、差別・区別・排他の根本原因となる可能性は否定できません。しかし、これらの問題は自然権の概念自体の欠陥というよりも、その実践における課題と捉えるべきでしょう。

故に社会的包摂の概念が必要でこれは意思の力だと考える

社会的包摂とは

社会的包摂の概念

定義:社会的に弱い立場にある人々を含め、市民一人ひとりを排除や孤立から守り、社会の一員として取り込み、支え合う考え方。

起源:1970年代のフランスで、障害者や高齢者の困難を分析する中で生まれた概念。

目的:拡大する不平等感を抑制し、より効率的な福祉国家を再構築するため、周縁化した人々を社会に再び参加させること。

適用範囲:職業、健康、教育、家庭環境、国籍、ジェンダー、年齢層、地域環境など、多元的な要因による社会的不平等に対処する。

政策への影響:ワークフェアやアクティベーションと呼ばれる職業訓練政策、ベーシック・インカムの議論、インクルーシブ教育などの分野で具体化されている

社会的包摂の実践において、個人の意思と社会の仕組みは密接に関連し、両者が協調することで効果的な包摂が実現されます。

個人の意思の力が重要

意識改革:社会的包摂を実現するには、まず個人が排除や差別の問題を認識し、包摂の重要性を理解する必要があります。

積極的参加:個人が社会活動や地域コミュニティに積極的に参加することで、多様性を受け入れる土壌が形成されます。

自己啓発:個人が自身の偏見や固定観念を認識し、克服しようとする意思が包摂的な社会の基盤となります。

社会の仕組みとしての包摂

法制度の整備:差別禁止法や機会均等法など、包摂を促進する法律の制定が重要です。

教育システムの改革:インクルーシブ教育の導入により、早期から多様性を尊重する意識を育成します。

雇用政策:ワークフェアやアクティベーションなどの職業訓練政策を通じて、社会参加の機会を提供します。

社会保障制度:経済的な側面から包摂を支援する仕組みの検討が進められています。

まとめ

個人の意思と社会の仕組みは相互に影響し合い、包摂的な社会の実現に向けて協働します。個人の意識変革が社会制度の改革を促し、同時に、包摂的な社会制度が個人の意識や行動を変容させていくのです。

組織において社会的包摂を実現・実践するための要素を、MECEの原則に基づいて以下のように整理します:

1.制度的要素

包摂的な方針・規則の策定

多様性を尊重する人事制度の導入

公平な評価・昇進システムの構築

バリアフリー環境の整備

2.教育・啓発的要素

多様性理解のための研修プログラムの実施

インクルーシブリーダーシップの育成

偏見・差別に関する意識改革セミナーの開催

包摂的な組織文化の醸成

3.コミュニケーション的要素

多言語対応の推進

障害者とのコミュニケーション手段の確保

対話の場の設定

多様な意見を尊重する風土づくり

4.支援的要素

メンタリングプログラムの導入

キャリア支援制度の充実

ワーク・ライフ・バランスの推進

心理的サポート体制の整備

5. 参画促進的要素

意思決定プロセスへの多様な人材の参加

エンパワーメントプログラムの実施

社内ネットワーク・コミュニティの形成支援

多様な人材の活躍機会の創出

これらの要素を総合的に実践することで、組織における社会的包摂の実現が促進されます。

そして、これらの実現のキーになるのが「リベラルアーツ」なのです。

次回はリベラルアーツについてです。

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